WCAG 2.0研究会参加

NAPとITRC協賛のWCAG 2.0 LCWD研究会に参加してきた。
WCAG 2.0 WD翻訳Understanding文書の日本語訳を読んで出かけたのだけど、正直なところまだ人様に説明できるほどの理解ができていない。
その中で、ベースラインという考え方について思ったことを書いてみたい。今日の研究会でわかったことは、

  • 達成基準より上のレイヤーは具体的な技術やユーザエージェントには依存しない形で書かれている。
  • サイト運営者はそのサイトがWCAG 2.0適合と宣言するに当たって想定するベースラインを決める。たとえばXHTML 1.0とCSS 2.0、JavaScriptとか。このベースラインの段階では、JavaScriptのように一口で表現することになり、その中のどのような部分を使うかなどにはふれていない。
  • そのベースラインとした技術について、どういうテクニックを使えば達成基準を満たすようにできるかについては、Techniques for WCAG 2.0文書に記載されているのでそれを用いることができる。Techniques文書には「User Agent and Assistive Technology Support Notes」という項目があちこちに設けられていて、これによってそのテクニックがどのユーザエージェント(支援技術)で有効に働くかを知ることができる。

だから、特定のベースラインに基づいてWCAG 2.0の達成基準を現実世界で満たすことの根拠を示すものは、

  • Understanding文書から誘導されるTechniques文書のテクニック
  • Techniques文書のUA&AT Support Notes

ということになる。
ちょうど、支援技術が提供するでこぼこの床の上に、ベースラインという平たい板を置き、その上に床を踏み抜かないような形で踏む場所をテクニックとして定め、その基礎の上に達成基準、ガイドラインが乗っている、という形を想像してしまった。
さて、このテクニックおよびサポートノートだが、例示としては(暗に英語版の)JAWS, Window-Eyes, Homepage Readerなどが挙げられている。ということは、たとえば日本国内の支援技術がどのようなテクニックによって特定のベースラインに基づくWCAG 2.0達成を可能にするかは全く情報が整備されていないということになる。この部分がきちんと埋められない限り、おそらく国内においてWCAG 2.0適合性は宣言できないだろう。それはすなわち、Understanding文書に当たるものを国によって個別に整備する以外にないということを表しているのではないか。日本はまだよい方で、HPRもJAWSも日本語版が存在する(逆にそれ以外はUAとしてはあまりに非力といわざるを得ない。)。ましてやさらに支援技術の発達が未熟な地域ではより難しくなるだろう。
ともかく、WCAG 2.0が正式勧告になるまでに、UnderstandingおよびTechniques文書の日本対応をっすめる必要があるだろう。その際、安易に日本で多く普及しているかもしれない支援技術のみにフォーカスすることでサイト運営者の負担が大きくなりすぎたり、日本の支援技術レベルが低いままで止まっていてよいというお墨付きを与えたりする結果にならないことを願いたい。